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工面するとは
まず、「工面する」ということは、いろいろな手段や方法で手はずを整えることをいいます。なんとか工夫して金銭を用意すること。旅費を工面するというのは、なんとか旅行の費用を用意することをいいます。ほかにも、金回りや相談、談合などの意味でも表現されます。とにかく、工面するの意味には、なんとかお金を用意するという意味合いがあります。お金に困ったひとなどが、お金を工面する、つまりなんとか手段や方法を使ってお金を用意する意味合いで使われることがあります。
お金の工面!ドラマなどで見る給料の前借り
お金を工面するということで、給料の前借りについてお話しします。たまに、ドラマや映画などで、金遣いの荒い主人公が会社から給与を前借りするシーンがみられます。ドラマなどで起こる給料の前借りですが、果たして現実社会でもあり得ることなのでしょうか。お金に困っているひとは、給与の前借りしてでも、お金を工面したいと考えるものでしょう。そこで、お金を工面するために給料の前借りができるのか、考えてみたいと思います。
会社は工面するために前借りに応じないといけないのか
労働基準法では、給料の前借りについて触れています。労働基準法での給料の前借りとは、「これから働く分の給料を先に渡す」のではなく、「これまで働いた分の給料を指定の給料日前に支払う」ことになります。もし、将来の労働分の給与を先渡するとなると、強制労働にあたり、労働基準法違反となります。なので、給料の前借りとは、あくまでも、これまで働いた分の給与を給料日前にもらうことになります。なので、給料の前借りというよりも、給料日よりも早い日に給料をもらうことになります。
では、会社は給料の前借りに必ず応じなければいけないのでしょうか。実は、会社が前借りに応じなければならないという法的な義務はありません。給料の前借りに応じるかどうかは、あくまで会社の裁量次第なのです。
工面するための前借りに応じてもらえるケース
給料の前借りに応じるかどうかは会社次第であると書きましたが、「前借りに応じなければならないケース」が法律で定められています。
- 労働者自身、もしくは労働者の妻が出産する場合
- 労働者やその家族が急な事故や病気で入院、もしくは高額な治療を受けることになった場合
- 地震、雪害、津波など予期せぬ自然災害で家屋などに甚大な損失を受けた場合
- 親族に対してやむを得ない出費が必要になった場合
労働基準法第25条本文によれば、
使用者は労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。
つまり、労働者本人や労働者の収入によって生計を維持している家族が出産したり、病気になったり、災害に遭ったりした場合は、前借りに応じることが法的に義務付けられる、ということです。
ちなみに、「その他、厚生労働省令定める非常の場合」というのは、労働者の収入によって生計を維持する人が死亡した場合や、結婚などやむを得ない事情で一週間以上帰郷する場合とも定められているので、親族の結婚式やお葬式などに参列しなければならない、という理由でも認められます。
このように、給料の前借りを会社側で応じなければいけないケースは、労働者に関わる出産、疾病、災害、冠婚葬祭などになりますので、単なる浪費などの理由による前借りは、なかなか会社に応じてもらえないかもしれません。逆に上記であげたようなことで工面するための前借りであれば、会社も前借りに応じる義務がありますので、前借りしやすくなるでしょう。
前借りする前に知っておきたいこと
工面するための前借りを受け取る時期
労働基準法第25条には、
非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない
とありますが、いつ前借りした給料をもらうかまでは明記されていません。なので、たとえ前借りを申し出ても、いつ前借りした給料をもらえるのかわからないのです。なので、工面するために前借りを希望するのであれば、なるべく早めに前借りを申し出ましょう。また、いつ前借り分の給料がもらえるのかを会社側に聞いてみましょう。なるべく早くもらいたい場合は、その旨を会社に伝えるようにしましょう。
前借りで受け取ることができる金額
前借りで受け取ることができる給料は、あくまでの「既住の労働」分になりますので、既に働いた日数分の給料しか受け取ることができません。
例)
給与算定期間 : 毎月1日~30日までの働いた日数
前借りを申し出た日時 : 15日の勤務終了時
前借りで受け取れる金額 : 1日~15日までの働いた日数分の給料
企業によっては、勤務日数に関係なく、必要な金額分の前借りを提案してもらえるかもしれません。ただし、その場合は法律上では、会社と労働者間のお金の貸し借りではなく、経営者個人と労働者個人間のお金の貸し借りになります。給料の前借りに関しては、基本的に既に働いた分の給料の前借りになるので、それ以上の金額に関しては、経営者個人と労働者個人のお金の貸し借りになります。
また、仮に「前借りした給料を来月分の給料から天引きする」などとした場合、会社側が強制労働を労働者に課したことになり、労働基準法17条で定められている「前借金相殺の禁止」事項にあたり、労働基準法違反となる恐れがあります。なので、前借りできる給料分は、将来の労働ではなく、既にした労働分での給料であることを頭に入れておきましょう。
借用書の活用して金銭のトラブルを防ぐ!
給料の前借りであっても、お金の貸し借りですので、互いの認識にズレが生じやすいこともあり、後々のトラブルにもなりかねません。そういうったトラブルを未然に防ぐためにも「金銭借用書」を活用しましょう。私たちが行うお金の貸し借りは「金銭消費賃貸借契約」という法律行為にあたり、民法が適用されます。
金銭消費貸借契約では、口約束でのお金の貸し借りも契約として成立するのですが、口頭による契約では曖昧になりがちです。お互いの認識にズレが生じると、「前借りの給与分が少ない!」「指定日になっても前借り分の給料がもらえない!」などのトラブルになりかねません。
そういったトラブルを事前に防ぐためにも、「金銭借用書」が有効です。金銭借用書があれば、お互いが認識した契約内容を書面に残すことができるので、認識違いによるトラブルを事前に防ぐことができます。金銭借用書は市販のものやインターネットで手軽にダウンロードできるテンプレートも存在しますが、会社で規定のものがあるのならば、そちらを使うと良いでしょう。
金銭借用書で記入するべき項目は主に以下になります。
- 金額
- 日時
- 借主名、貸主名(会社から借りる場合は社長名になることが多い)
- 返済期限
- 返済方法
金銭借用書は、お互いの認識の違いを防ぐ効果があるとお伝えしましたが、金銭借用書には法的な拘束力がありません。そこで、拘束力を高めるために、法的な執行力を持つ「公正証書」を使用すると良いでしょう。
本当に給与の前借りが必要なのか
以上のように、お金を工面するために給料の前借りについて触れてきましたが、給料の前借りをするときは、いま一度、本当に給料の前借りをしなくてはいけないかを考えましょう。なぜなら、給料の前借りをすることで、同僚や上司からの評判が悪くなる可能性があり、将来の出世コースから外れてしまう可能性があります。会社からの評価も下げてしまう可能性があるので、本当に給料の前借りがお金を工面するために必要なのか考えてみましょう。ただし、どうしてもお金が必要な場合は、給料の前借りが既住の労働分範囲であれば可能であることを覚えておきましょう。
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